竜虎相討つ!
と、今の状況を表現してしまって、果たして良いものであろうか。
大体にして。酒神了と相対して竜虎と呼びうる者など、そう簡単に出現するものではない。
……本来の酒神了であるならば。
だが。
今の状態であるならば、まさしく竜虎相討つのキャッチが、ピッタリくる。
めいどさんへの愛(?)と欲望が、鍛えられし肉体とコスチュームをもって究極までに凝縮された物体と。
めいどさんへの愛はともかく、そのオタクキマイラとでも呼ぶべき外見が極限までの激怒と合わさった物体と。
「オーラがふたつ、激しくぶつかり合っている……」
幸運にも、彼の上司の姿を見ることのできないジェリドがつぶやく。
「……ドス黒い渦と……何とも、表現しがたい極彩色の渦が……」
「ふっふっふ」
ラスボスが ―― いい加減名前付けてやれよ、と、自分でも思うが、まあ、いいや ―― 不敵な笑みを浮かべる。
「いいザマだなぁ酒神了、愉快、じつに愉快だ。わあっはっはっは」
何がそんなに愉快なのかは知らないが、いきなり豪快な笑い声をあげる。
「ぷうっ」
ほっぺたふくらませてぷんむくれな酒神。成人男性がやってもあまりかわいくない………はずなのだが、妙に似合ってる気がしないでもないのは、服装その他の賜物か?
「ぶっ殺しちゃうもんねっ」
正面から突っ込む……が。
「……いけません!」
アンディが叫ぶ。これは先ほど、ジェリドがやられた時と、全く同じ状況だ。
そしてその後の展開はもちろん……
『ご主人様♪ おやめくださいませっ♪』
めきっ。
酒神の前蹴りが、まともにラスボスの顔面を捉える。前のめりに倒れるラスボス。
ミニスカートなのに、それを忘れて足を前に思いっきり上げたのは、女装になれてないせいか。あ、おぱんちゅ見えた。ちなみに絵柄はくまさんである。
「を〜っほっほっほっ」
高笑いを上げて、いつの間にか履いていたピンヒールでラスボスの頭をぐりぐりと。
「このあたくしが! めいどなんかに欲情すると思って? めいどなんてのは下僕よっ下僕なのよっ。下等人種なのよっ。 あたしはその下僕を使う立場にあるのよっ。下僕はご主人様に尻尾ふるための存在なのっ。女王様とお呼びっ! を〜っほっほっほっほっほっほっほっ!!!」
ぐりぐりぐりぐり。
ぴしっ。
『奴等』4人は、何か強固な物に亀裂が入る音を、確かに聞いた。
アンディが何回か聞いたのと、全く同じ音である。いや、これまでより、はるかに大きい音だったかもしれない。
「……そうでした」
どうにか衝撃から回復したアンディ。さすがに若い分、適応力も高いのか。
「確かに、めいどさんを実際に周囲に置いている身としては、そういうものなんでしょうね……」
全ては終わったかに見えた。
だが。
ぴく。
踏みつけられたまま二度と動かないように見えたラスボスが……
「……まさか……」