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其の拾壱 隠し玉 |
登場人物 酒神了&臥龍郭斗&傍観者達
酒神がジャブを放つ、臥龍は大きめの動作でそれを避ける。
「上手いな。酒神の野郎……流れを一気に自分のモノに引き戻しやがった」
山口が心底忌々しげに吐き捨てる。
「えぇ、おそらく酒神さんは二度とあの髪を使わないでしょう」
それに応える土佐も、今一釈然としない表情だ。
「髪の毛一本で戦局を自由にする。まさに悪魔だよ、アイツは……」
山口の視線は動かない。臥龍と酒神の戦いを凝視するのみだ。
「ただ、絶対素手と安心していた心に付け入った一つの髪の毛。それで、郭斗君は安心出来なくなった」
土佐は腰に携えた刀を握りしめている。山口も奇妙な腕輪を弄んでいる。
だが、二人は動かない。
「ふざけやがって……」
その言葉は、誰の耳に届いたろう?
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其の拾弐 ジョーカー |
登場人物 隠し持つモノ達
臥龍の拳から光が発せられた直後、酒神の反らせた肉体が背後に弾かれ、後ろに倒れそうになるが、酒神は重心を落としてかろうじて堪える。
バキィッ!!
酒神の側頭部に臥龍の右足が吸い込まれ、まるでビリヤード球の様に弾き飛ばされる。
「蛟小流」
腰を落とした臥龍が小さく呟いた。林の中へ追い打ちはかけない。
「五本の指で放つ小型の『臥龍咆吼』か」
不意に、林の中から声が響いた。
「あぁ。コイツが俺の切り札だ……」
技の正体を見破られたことを、さも当然の如く受け止める臥龍。
「いつまで三味線弾いてるつもりだ?
空気のみならず、草木までも揺らす。それはまさしく臥龍の咆哮。
「俺が見たいのはお前のチンケな技術じゃねぇ! お前の……咬神流の全力だ!!」
怒号の中、平然と松林から出てくる酒神。
「咬神流の無限の力……その底を見せろってのか?」
服の上から見て取れる程、酒神の全身がパンプアップしている。
「そんなに死にたいなら、見せてやるよ」
両者が腰を落とし、闘気を……殺気を充実させて行く。
「コイツが、俺の玩具だ」
酒神の姿が、その場に居る全員の視界から、消えた。
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其の拾参 巣 |
登場人物 土佐遼&山口狭士&魔斗災炎
足音が一つ。いや二つ。それから打撃音。
「グッ……」
呻き声らしき物が聞こえた場所に、臥龍郭斗の姿は無かった。直後の激突音。
「消えた?」
二人の言葉は、全てが終わってから発せられた。
……動けない……
……冷や汗すら……流せない……
……動いたら……死ぬ
両足を肩幅に開き、自然体のまま、臥龍は止まっていた。
「お、おい郭斗……」
土佐の警告と、山口の指が寸断されるのは、まったくの同時だった。
「う……ぐ………」
傷口を抑えうずくまるが、悲鳴は上げない。戦場での生活が、山口の肉体に染み付けた習慣。
「咬神流の『結界』と言う奴か。不用意なモンぢゃの。どれ、見せてみぃ」
のんびりと歩いて来た魔斗が、山口の傷に何かを塗る。血が止まり、痛みが消える。
「今は応急処置ぢゃしの。後でゆっくりと治してやるわい」
魔斗はすぐに顔を上げ、戦いの行方を見守らんと……
「結界? そんな生易しいモンじゃねェよ……」
傷の痛みから立ち直った山口が、自嘲気味に呟いた。
「これは巣。咬神流と言う数万年の月日の中作り出されて行った、残忍な龍の巣だ……」
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其の拾泗 銀 |
登場人物 臥龍郭斗&酒神了
「これだけかよ」
臥龍が、呟いた。未だ動く事も出来ずに居ると言うのに。
「これだけなのかよ」
たとえ真なる闇に取り込まれようと、龍は臆さない。その強き心身で、全てを貫くのみ。
「たったこれっぽっちが、咬神流の『無限の力』なのかよ?」
臥龍郭斗……この男もまた、龍。
「随分と浅い底だな」
闇に潜む龍は、人が使う音をもってしては応えなかった。
(………なんだこれは!?)
土佐が、山口が、魔斗が、状況を把握するより早く、再び二撃。臥龍の左腕を再び砕き、次に肋骨を砕いていく。
後一秒も過ぎる前に、臥龍郭斗は死ぬ。
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其の拾伍 加速 |
登場人物 臥龍
(まずいな。こりゃあ)
臥龍郭斗の思考は、加速していた。
(ここまで速いたぁ、予想外だぜ)
人間の尺度で言う、数百分の1秒、いや、それ以下の時間で、臥龍の思考は、形を成す。そして、加速する。
(こうなったら。いや、待てよ)
やがて、言語の形を超え、加速する。
(だが、奴ぁ)
加速する。
(………………)
加速する。
加速
炸裂音が響き、死合はその時を持ってして、決着した。
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其の拾陸 月光 |
登場人物 生存者
爆音が聞こえ、土佐と山口の間を一つの肉体が突き抜けて行く。
その場に居た者で、それを視認出来た者は居ない。だが、何が起こったのかを、知らない者も一人として存在しなかった。
「もう、覗き見は終りですか?」
影から、二つの人影が姿を現す。いずれ劣らぬ傾国の美女。
「えぇ。死合は終ったわ」
炎が砂を蹴りながら進み出る。
「ほぼ、予想通りの結果ね」
魅夜は静かに歩み寄る。
月明かりが静かに、風に揺られる銀髪を照らしていた。
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其の拾漆 歴史 |
登場人物 ???
始めに、一人の神が居た。
『種』は、彼にとっては非常に都合が良かった。
二十数年前。
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其の拾捌 |
登場人物
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其の拾玖 |
登場人物
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其の弐拾 |
登場人物
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夢ノ宮奇譚は架空の物語であり、そこに出てくる人名、組織、その他は実在するものとは一切関係ありません。