めいど in Heaven


β 2nd 3ed 4th 5th


β
登場人物 ………聞くな

 とてとてとて。ばったり。

「はうう、またやってしまいましたぁ。申し訳ございませぇんご主人さまぁ……」

 極めて一般的なシチュエーションだ。
 しかも、たったこれだけの文章で、この行動を取った者が、どのような風体をしているか、大体、想像がつく。
 上は半袖であるが、袖の部分がやたらと膨張している。下はミニスカート。やたらと、ひらひらした部分が多い奴。さらに純白のエプロン。やっぱり、やたらとひらひらとした奴。そして頭には……もう、いいや。
 筆者の描写力ではこのあたりが限界である。言ってしまえ。ようはメイドさんだ。それも世に言う、ドジっ娘メイドさん。
 わざとやってるんじゃないかと思うぐらいに、おさらとか落してはご主人様におしおきされる、あのメイドさんだ。
 でも、おしおきで済むのだから、ある意味、よい。これが日本の武家とかだと一気に番町皿屋敷の世界に突入する。「いちま〜い、にま〜い」って、あれだ。つまり、おしおきされても、命があるだけよいと……言えるかどうかは、知らぬ。
 ともかく、そのメイドさんである。当然、その顔は、はかなげにして可憐な……

「……がるるるるる」

 ……訂正。
 眼光するどく、氷の殺気をたたえている。はかなげどころか、百辺殺しても死にそうにはないタフネス。それも百辺どころか、いっぺん殺すことすら、宝くじで1億円当てるよりも困難であろうことは、容易に想像がつく。
 明らかに、ドジっ娘めいどさんなんて人種とはもっともかけ離れている。大体にして、野郎だし。こいつ。
 唯一の救いは、彼が野郎であるとはいえ、類まれなる容姿の持ち主である、ということであろうか。
 中性的とも、言えなくもない。場合によっては女性でも通用する。ただし、ドジっ娘などという人種ではなく、氷の美女、クールビューティー、そういった呼び名の方がぴったり来るのであるが。

 彼の名を、酒神了といった。

 新世紀に入ってまだ1年と経っていないのに、どうしてこのような世紀末的事態が発生してしまったのか。
 数時間前、こんな事があったのだ。

 その時彼は5人の覆面に囲まれていた。
 これ自体は、よくある話である。

 酒神了の日常生活は極めて怠惰である。起きたい時に起き、寝たい時に寝ている。
 ついでに言うと、気が向いたら街に繰り出して、彼の主食である美女を捕食する。食べたら残りは放り出す。そういう生活をしている。それでいて、あんなに強いのは反則である。どう考えても人間では、ない。
 って、そうだ。本当に人間じゃないんだっけ。いろんな意味で。
 彼はその血統からいって完全なる人間ではないし、生誕以後も、人間であることを放棄するような鍛え方をしてしまった。
 かくして超人どころか超神人(本当は「神」と「人」は上下に並べてひとつの漢字である)が誕生してしまったのである。

 おかげで、その筋ではすっかり有名になってしまった彼を狙ってくる者は多い。
 例えば、強者を倒して名を挙げようとしている武道家や格闘家。ただ、並の者では彼に勝つどころか、触れることすらできない。
 だから、適当にあしらって力の差を見せ付ければ、大抵は引き下がる。たまに気分が悪いと半殺しにする。もっと気分が悪ければ全殺しにする。気分が最悪の時は社会的に全殺したりもする。
 あとは、知らず知らずのうちに彼が怨念を買ってしまった人間。
 よくあるのは、敵討ちというシチュエーション。あるいは彼女を寝取られたとか、様々な理由から、無謀な挑戦をしてくる。
 ただ、そんな事情は彼にはどうでもいいことなので、やっぱり最悪、社会的に全殺すことも、やる。

 で、わけもわからず取り囲まれた酒神了であったが、その日は襲撃者にとっては幸運なことに、ご機嫌斜めというわけではなかった。
 とりあえず、そいつらを一瞥する。気の弱い人間だったらそれだけで逃げることを選ぶ、氷の殺気である。
 それでも引き下がる様子を見せない襲撃者たちに対して彼は、

「一応、理由を聞いておこうか」

 問答無用で全殺しもありえた以上、これはなんとも寛大なひとことである。だが襲撃者らは、その寛容さに対して、神に感謝してもいいようなところを、逆にそれにつけ込むことにしたのである。これは余裕なのか、単に馬鹿なだけなのか。

「3日前のことを覚えているか?」

 別に思い出してやる義理はないのだが、記憶をさかのぼってみることにした。3日前……ああ、そういえば。
 たまたま歩いていたら、たまたま、怪しげな野郎どもが、標準よりも上の容姿を持つ女性に絡んでいるのを見つけたので、なんとなく気が向いたためにそいつらを軽くあしらい、その女性を助けた、ということがあったかもしれない。
 当然その後、その女性をおいしくいただいたのは言うまでもないことであるのだが。

「ああ、なるほど……」
「思い出したか酒神了」
「あの時のクズどもか」

 ぴくっ。怒りの表情を見せた……と思われるクズども。ただ、覆面をかぶっているので、実際のところは分からないが。
 ただ、たぶん彼らが覆面の下で怒りの形相を見せ、襲い掛かってきたからには、やっぱり気分を害したのであろう。
 5人いるうち、4人が酒神の周囲を囲み、四方から襲い掛かってくる。

 ひとりの人間に一度に襲い掛かることができるのは4人が限界なので、4人と同時に戦うことができれば、あとは何人が一緒にいても同じこと。地球人全員とだって戦える。そんなことを言った奴がいるらしい。
 それなりに説得力がなきにしもあらずだが、本当にそんなことをやっては、普通は体力が持たない。
 だがこの酒神了なら、あるいはそれくらいならやってのけるかもしれない。そういう男である。
 案の定、その4人は彼に指一本触れることもできない。やはり雑魚だ。
 ちょっと暇になってきたので、そろそろ潰すかな? そう思ってきた矢先に、残りのひとりが何かやっているのが目に入った。
 ライフル銃のように見える。怪しげなジェネレーター?がついているので、もしかしたら実弾ではなく光線銃であろうか。
 なるほど。4人はおとりであり、本命はそっちだったか。周囲に気をとられている隙に、飛び道具で狙い撃つ。
 酒神了に挑もうとしている奴だ。少しは頭を使ってきたか。だが、甘い。ふたつほど欠点があった。
 ひとつは、酒神をひきつけるおとりとしての4人に、それだけの技量がなかったこと。
 そして、実弾だかビームだか知らないが、そんな程度で死ぬような酒神了ではないことである。
 こういう奴等にとって、一番こたえるのは、自らが用意した「完璧な」策略に、敵が完全に引っ掛かったと思った瞬間、そんなものを問題としないようなパワーによって、それが打ち破られるという事態が発生することだ。
 銃弾を急所にぶち込まれた相手が、全くそれを問題ともしない様子でいたら、相手の戦意は崩壊するであろう。
 ましてや、その後ひとこと「かゆいな」とか言ってみせれば……

 銃口から光線が発射された。双方にとって予定どおり、それはまともに、酒神に命中する。
 そして、酒神にとっては予定していた以上に、それは痛くもかゆくもないシロモノであった。
 少なくとも、肉体的なダメージという点にとっては。

 次の瞬間。
 酒神了は我が目を疑った。


2nd
登場人物 だから聞くなって

 次の瞬間。
 酒神了は我が目を疑った。

「……ななな……」
「やった!大成功だ!!!」

 困惑する酒神とは対照的に、喜びまくる覆面ども。確かに、肉体的には全くダメージはなかった。
 だが、この光線がもたらした効果は、精神的に多大なるダメージを酒神了に与えることに、成功したのである。
 彼が身にまとっていたのは……文の冒頭に書いた通りの、いわゆる、メイド服であった。

「貴様らッッッ」

 殺す。とりあえず、そう決めた。そして腕を振り上げた、次の瞬間。

 すってん。

 ありえない事態が発生した。
 無様に、これ以上ないほど無様に、酒神はバランスを崩し、足を跳ね上げ、万有引力の法則に従い、転倒した。
 万有引力の法則に従い、背中が大地に密着し、後頭部をしたたかに地面に打ち付ける。

「よっしゃあああ」

 さらに喜びまくる覆面たち。どうにか上半身を起こし、立ち上が……ろうとするはずであった。そのつもりだったのが。
 無意識のうちに、両手が上がる。後頭部を抱え込むような姿勢になり。

「あいたたたた……ふええん、またやってしまいましたぁ……」

 !!??

 一瞬、たった今の事態が全く理解できなかった。今の声は自分が発したのか!? この酒神了が?
 呆然、ついで愕然。そして次の瞬間、大激怒。
 対照的に、さらに喜びの度合いを高める、覆面たち。

「やった! やったぞっ!! 大成功だ、これ以上はない、大成功だ!!!」
「……いったい、何を……なさったんですかご主人様ぁ……」

 まただ。なぜ俺はご主人様などと……

「貴様には今や『どじっ娘めいどさん属性』が付与されている。もはや貴様はただの無力なめいどさんに過ぎん」
「な、何を……おっしゃるのですか、ひどいですぅ」

 しかも語尾は「ですぅ」かいっ! 駄目だ、少しでも気を抜くと、口調が萌へ萌へなめいどさんになってしまう。

「もはや貴様の攻撃は何ひとつ通じぬ!」
「それは……試して、みようじゃねえかッッッ」

 どうにか気力を振り絞り、立ち上がる。そして最高速で突進して懐に潜り込み、一撃で心の臓をえぐりとる……
 はずであった。

 とてとてとて。

 どう見ても戦士の動きではない。しかも、ついつい両手がぱたぱたと動いてしまう。
 そして。

 ばったり。

 まただ。なぜに今の自分の体は、こんなにバランスが悪いのだ? これが、どじっ娘めいどさん属性とやらの影響なのか?
 そして、何よりも腹が立つのは。

「はうう、またやってしまいましたぁ。申し訳ございませぇんご主人さまぁ……」

 ……今まで自分が築いてきたイメージが、価値観が、アイデンティティが、レゾン・デートルが、完全に崩壊した瞬間であった。

 とてとてとて。
 家までの道がこれほどまでに遠く感じたのは、久しぶりであった。
 独特な歩き方のせいで、歩調は極めて遅い。そして存分に発揮される「どじっ娘めいどさん属性」。
 生還を果たすまでに、踏み抜いたどぶ板十数枚。上から降ってきた物は二十数個。転倒する事数知れず。
 当然、周囲からの視線が集中する。「見せもんじゃねえ、散れ」と言いたいところなのに、口から出てくるセリフは

「ううっ、恥ずかしいですぅ……」

 となってしまう。
 そして何より。奴等の言葉。

「我々に逆らった罪は重い、重いぞ、酒神了。貴様は一生、どじっ娘めいどさんとして人生を送るのだ。
 運が良ければ、いいご主人様にでも巡り合えるかもしれないなあふはははははははは」

 こんな屈辱は久しぶりであった。あいつら絶対全殺しよりもひどい目見せる。神と悪魔の双方に、そう誓った。


3ed
登場人物 聞かないで

 この世に永遠など、存在しない。いかなるものも、この摂理から逃れることはできない。至極当然のことである。
 もちろん、彼もまた、それを疑うわけではなかった。しかしその一方、その事でさえも例外はある。永遠はどこかに存在する。
 心のどこかで、それを強く信じて疑っていなかった。だが、それは幻想でしかない。この事に彼は、気づいてしまった。

 その日、アンディが見た物は、彼の人生において、最大級の衝撃であった。

 彼の尊敬する師匠、酒神了に突然呼び出され、わけもわからぬうちにたどり着いた先は、酒神の下宿先のアパート。
 いつものことであるが、師の前に立つのは、怖い。むろん、尊敬できる人に信頼されていることに対する喜びもあるが、それでもなお、ぬぐいきれないほどの威圧感、恐怖感が、心の奥底に常に存在している。
 それが、たったひとつの失敗、ひとつの失策すら許されまいと、常にアンディに警告を送ってくる。
 これを克服するには、自らの手で師を超えるしかない。彼の下にいる以上、この世界に踏み込んだ以上、いつかはこのことに直面せねばなるまい。だが、果たして、自分にそんなことが可能なのであろうか?
 とりあえず、考えるのはやめにした。ノックして、扉を開ける。その先に待っていたのは……

「……」

 眼前の事実……いや幻に違いない。違いないと思いたいが……残念ながら事実に対し、アンディ君にできたことは、ただ直立不動の姿勢を保ったまま、硬直することだけであった。
 彼の、あれほど敬愛してやまない師が、クールでハードでデンジャラスな酒神了が……

 ……メイド服ぅ!?

 ぴしっ。
 これまで酒神了という男に対して持っていた、鋼鉄の忠誠心、絶対の信頼感、そういったものに、巨大な亀裂が入る音を、アンディは聞いたような気がした。

「……」
「……」

 双方の間に、気まずい、あまりに気まずすぎる沈黙が流れる。こんな異常な状況。野郎がふたり、片方はめいどさん。
 喜ぶ人は喜ぶのかもしれないが、残念ながら筆者の好みでは、あまりない。

「……あの……」

 先に口を開いたのは、やはりアンディであった。

「あ゙ん゙?」

 目が怖い。「てめえ何か余計なこと言ったらぶち殺すぞ」と言っている。
 それは何かの冗談ですか、そう聞こうとして、アンディは断念した。悪い冗談でも、本意でもないことは、酒神の目を見れば、よくわかることだ。彼は発言内容を変更する必要にせまられた。

「いったい全体、何が……あったんでしょうか?」


4th
登場人物 聞かないでくださいお願いします

「そりゃ師範が悪いですよ。問答無用でぶちのめせばよろしかったんです。いつもの様に。
 そうすれば、そんなみっともないメイド服なんか着ることも……」
「……みっともなくて悪かったな……」
「似合っているとお思いですか?」
「思うわけないだろ……ちくしょあいつら……」

 思っていたら人間として終わっていたところであった。
 愛弟子の前ということもあり、無理矢理に、本当にどうにか気力を振り絞り、いつもの口調を保っている酒神了。
 ちょっとでも精神力が途切れたら、あのいまいましい、萌へ萌へめいどさんな口調になってしまうだろう。

「脱げないんですか?」
「脱げるもんならとっくに脱いでいる……」

 むろん、それは試した。だが、脱いだ先から新たなめいど服が出現してくる。
 20枚あたりまで脱いだり引き裂いたりして、ついに酒神は無駄を悟ったのであった。

「……で、だ。命令する」
「何でしょう。」
「『奴等』を全員集めるですうっ!!!」

 ……最後の方で集中力が途切れたらしい。あ、また亀裂が入る音がした。
 理由は分かる。聞いた話を総合するに、どうやら敬愛する……まだ一応は敬愛している酒神了は、襲撃者の正体については、全く把握していないらしい。が、それがわからないことには報復のしようもない。
 だから、彼の誇る最強の特殊部隊……通称『奴等』を呼び付けて、その総力を挙げて調査させようというのであろう。

「……ご要望とあらばお呼びいたしますが……いいんですか? 本当に?」

 ひくっ。酒神の顔が怒りに歪む。気が立っている人間とっては、たとえいかなる正論といえども、反論される事自体が気に入らない。

「何か文句でもあんのか?」
「呼ぶと……見られるってことですよ。その格好」

 ……怒りとは別の理由で、酒神了の顔がひきつった。そりゃそうだ。もともと彼がアンディを呼んだのは、よもや彼ならば自分がこのような事態になっていることを周囲には漏らすまい、そういう判断があってのことであろう。
 なのに、今『奴等』を呼んでしまったら、自らの手で、自らの配慮を破滅せしめることになる。

「それに『奴等』を呼ぶ必要もないでしょう。大体、犯人はある程度は、絞り込めます。」

 このような事ができる、類まれな技術力の持ち主。そして何よりも、このような高度なテクニックを、こんな馬鹿げた事に使用するような……ある意味、常人には思いもよらないような発想力の持ち主。それに該当する名前を、アンディはひとりしか、知らない。

「私にお任せください。お呼びして頂けたからには、最善を尽くします」
「そ、それは……きゃうぅ。うれしいですぅぅぅ」

 膝立ち、両手を胸の前で組み合わせ、目をうるませて。
 今アンディの耳に、いや脳に直接響いてきた音声は「ぴきっ」どころか「がらがらがら」だったかもしれない。


5th
登場人物 アンディ&魔斗災炎

 大見得切って出かけたものの、正直なところ、アンディの精神は沈み込んでいた。
 酒神のあんな姿を見てしまったからでは……まあ、ちょっとだけ、ほんっっっのちょっとだけ、それもないとは言えない。
 しかしそれ以上に、これから出会う相手に対する印象が、あまりにも悪い。
 その男はある意味、酒神とよく似ている。
 まず、彼は天才である。多少、抜けた点もなきにしもあらずであるが、こと知識面・技術面という点において、彼と比肩しうる者は「奴等」にも存在しないであろう。
 そして、類まれなる能力を持っていながら、それを公共に還元することなど思いもせず、ただ自らのためのみに使用する。
 もしかして天才と呼ばれる人物とは、こんなのばかりなのであろうか? ともかく、才能・精神ともに極めて危険な人物である。

「これはまた珍しい客人であるな」

 その男……魔斗災炎はのたもうた。

 社交辞令もそこそこに、本題に入らねばならない。だが、一体何と言って説明すればよいものであろうか。
 酒神了が萌へ萌へなめいどさんになってしまった。そんなことを、身内にすら知られたくないようなことを、よりにもよってこの男に悟られるわけにはいかない。もし、この男が犯人だとしたら、そんな事を心配する必要はないのであるが。

「どうしたんじゃ? 我輩に何か用があるのではないのか?」

 あんな事をしでかした犯人にしては、あまりにその態度は堂々としすぎている。酒神了直属の部下である自分を前にして、動揺する様子すら見せていないのだ。とりあえず、当面は何とかして、この厄介な男から情報を聞き出さねばならぬ。

「メイド……」
「ん?」
「……メイドさんって興味ありますか?」

 魔斗は「はぁ?」という顔をして、ぽかんと口を開けた。
 我ながら、あまりに奇妙な問いかけだ。酒神了のことを出すわけにもいかない以上、メイドを出すしかあるまいに。

「めいどがどうした?」

 仕方ない、もうちょっとストレートに聞こう。

「……ああ、もし、もし、仮にですよ。そこらにいる女性の服装を、メイド……いや、自分の好きなように、変えられるとしたら、いや……変えることって、あなたの技術なら、可能でしょうか?」
「服装をなあ。つまりそんなのがあるとしたら、それを使って道行く女性を片っ端からめいどな服に変えてやりたいと。」
「あ、えっと……」

 むろんそんな趣味はない。

「それともカノジョにめいどさんプレイを強要したいけど断られたんで、無理にでもめいど服を着せてやりたいとかか?
 いやあ、我輩はぬしのことを当世希な生真面目な奴だと思っておったのだが、人間など存外分からないのう、はっはっは」
「……え、ええ、まあ……そんなところです」

 酒神のため、アンディ君は仕方なく、あえて泥をかぶることにした。

「……ふむ。結論を先に言うならば、可能だ」

 可能? では、犯人はやはり、この男……

「だが、あくまで我輩の中での理論上の話じゃ。残念ながら、まだ我輩の手によって、現実化するところまでは、至っておらぬ」

 え? 本当だとしたらこの男は犯人ではない。が、そのまま信用してよいのであろうか……

「……もし、どうしてもというのであるならば、ひとつだけ、心当たりが、存在するがのう」

 その後の、魔斗災炎の語る事は、アンディにとってはあまりに驚くべき内容であった。


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夢ノ宮奇譚は架空の物語であり、そこに出てくる人名、組織、その他は実在するものとは一切関係ありません。

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