Red or Alieve〜郭斗の拳・第三部



テスト直前腹いせ企画(上)
登場人物 ???

「……どうも、『DoA』の、これから重くなる展開に耐え切れなくなって、ついでにネタも切れた作者が、逃避のためにこんなの書くことにしたらしい。どうか、見てやってくれ。」
「僕はどちらかというと、こういう方が好きなんだけど……」
「そうか?」
「……まだ、ね。」


(なんで今……僕はここにいるんだろう……)

 臥龍健斗は、改めて我が身を振り返った。
 彼の今の服装は、深緑を基調として、黄緑や茶色といった色で斑模様が染めてある。いわゆる「カモフラ」である。
 頭にかぶっているヘルメット。これにも同様の塗装がなされている。顔にはゴーグル。
 そして、彼の手に握られているのは機関銃。
 モーターの力でスプリングを引き、トリガーを引くとスプリングが解放された弾丸が飛び出す仕組みの、いわゆるエアガンである。
 M16ベトナムとか言うらしいが、健斗にはよく分からない。
 そして、さらに分からないのが……

「……」

 ここが学校の敷地内であるという、この事実である。

(……なんで、こんなことになったんだろ……)

 あれだ。全部、あの出来事のせいだ。
 健斗の頭の中で、時計の針は3日前にさかのぼる……


 校内連続狙撃事件。
 白桜学園内で発生した、この事件。学校帰りの生徒が、何者かに「銃のようなもの」で次々に撃たれているというのである。
 負傷者はいまだ出ていない。狙撃に使用された弾丸は、その全てがペイント弾であったからである。
 だが、放置しておくわけにもいかない。今はまだ発生していないが、万が一、目にでも当たったらただじゃ済まない。そうなる前に手を打たねばなるまい。

 この事件に際し、真っ先に目をつけられた団体があった。
 サバイバルゲーム同好会である。
 次々に寄せられる追及の手。それに対し、会長の東郷沙天(とうごう・さてん)はきっぱりと言い切った。

「サバゲープレイヤーにはプライドがある!我々は、ゴーグルを着用していない相手を撃つような真似は、断じてしていない!」

 だが。
 部員のひとりが狙撃されたことをきっかけとして、「JAC」が原因究明に乗り出したのである。そして、サバイバルゲーム同好会が犯人である動かぬ証拠を捕えたのだ。
 素直に生徒会やら教師に持っていけばいいものを、なぜか直接示談交渉に乗り出した「JAC」首脳。
 そこで交わされたのが「サバゲーで勝負」であった。

「もし我々が敗北するようなことがあれば、今回の件を潔く認め、今後二度とこのような事態の発生しないことを誓おう。まさか逃げないだろうね?」


(こんな挑発に乗る先輩も先輩だけど……)

 健斗は、「いつ何時誰の挑戦でも受ける」と言ったアントニオ猪木と、それを「JAC」会則に定めてしまった自分の兄を、心の底から怨んだ。


???
登場人物 ???

サバイバルゲーム……
ゲームの名を冠してはいるが、その内容は実際の戦闘に限りなく近い……
長時間の戦闘に耐え、狙った相手を確実に倒すだけの集中力に忍耐力、注意力に体力など……
実際の戦争にも必要とされる、それらの要素は、サバゲーにも同じく要求される……
そして、そういった過酷なゲームにおけるプロ級の男達……
そんな彼らの中で、健斗がどこまでやっていけるか……
楽しみだ……


口頭試問前日マジで投げたか企画(中)
登場人物 ???

 サバイバルゲーム同好会会長・東郷沙天。
 彼は、今回発生した一連の事件には関与してはいない。あえて言うならば、部員に対する管理能力の欠如は責められて然るべきなのであろうが。
 本来なら騒ぎを起こした一部過激派を引き渡せば、この件は解決するはずであった。が、彼はそうしなかった。
 なぜか?

(……私が望んでいたのはこういう戦いだ……)

 本来、サバイバルゲームの勝敗において、エアガンはそれほど重要な要素ではない。
 たしかに、敵陣営に属する相手に一撃食らわせれば、彼はその場でアウトとなり、ゲームからは除外される。が、普通、それは直接勝敗とは関係ない。なぜなら、大抵の場合、サバイバルゲームの勝敗は、相手陣営に乗り込み「フラッグ」を奪取することにあるのである。
 が。「完全決着ルール」と銘打たれて今回採用されたルールには、フラッグは存在しない。互いが互いをただ撃ち合い、先に全滅した方の負け。もっともシンプルにして、もっとも危険なルールである。

(気心の知れたいつものメンバーではなく、相手は本気で自分たちを倒そうとする戦士……)

 戦闘スタイルの違いこそはあれ、どうやら彼もまた、格闘家の心を持っていたようである。

(期待を裏切らないでくれよ……)

 ともあれ、かくして、休日の学内は、戦場と化した。


 背後に強烈な殺気。思わず後ろを振り向く健斗。
 T字路となっているそこには、誰もいない。

(……右か……)

 殺気はゆっくりと、だが確実に近づいてくる。むこうもこっちに気づいていることであろう。
 相手はおそらく、角を曲がった瞬間発砲する。ならばこっちは、それより一瞬早く撃つ。これしかない。
 健斗は銃を構え、壁際に寄る。長いようで短い数秒が過ぎる。
 そして、相手は角を曲がり……

「……!!」

 健斗が銃を突き付けていた相手。そして、健斗が銃を突き付けられている相手。
 それはJAC会長であった。

「……危なかったな」
「……ですね」

 互いに、苦笑を浮かべる。
 危うく、味方を撃ってしまうところであった。その危機を乗り越えたことに、また、相手が敵ではなかったことにより、緊張の糸が解ける。
 次の瞬間。

「ぐはッ!」
「!!」

 会長の頭から血が吹き出した。
 そのまま前のめりに倒れる。

「か、会長!」
「安心しろ、ペイントだ」

 いつからいたのであろうか。物陰から出てきたのは東郷沙天であった。
 完全に殺気を消していた。JACふたりに気取られず、隠れていたのである。
 彼もまた、歴戦の勇者であった。

「い、いや、そりゃ、ペイントなんでしょうけど……」
「大袈裟だな」
「……同感です、我が会長ながら」

 言いながらも、健斗も東郷も、それぞれ相手を倒す隙を覗っていた。
 と、いっても、相手はサバゲーのプロ。その一方、銃の扱いはシロウトの健斗。そして相手はどうやら、反撃も逃亡も許してくれそうにない。
 いまや健斗の命は風前の灯火であった。


口頭試問終了春休み突入おめでとう企画(下)
登場人物 ???

 相手はサバゲーのプロ。そして、敵のリーダー。
 一方、自分はシロウト。

(刺し違えられれば上出来かな……)

 これほどの相手なら、相討ちに終わったとしても十分な戦果である。
 健斗が覚悟を決めた、その時。

「ぐあっ!!!」

 今しがた、健斗が相対していた相手の全身が、銃声と共に朱に染まったのである。
 スローモーションで、前のめりに倒れる、最強の戦士。
 結局彼も、人のことは言えないほどにオーバーアクションが好きであるらしかった。

「……き、貴様ァ……」

 東郷沙天を撃ったのは、健斗のよく知る顔であった。

「……って、会長!?」

 そう、それはつい数秒前に、東郷によって倒されたはずのJAC会長であったのだ。

「貴様ァ!重大な反則行為だぞそれは!」
「チッチッチッ、わかってないな東郷」
 当然、激高する東郷。だが、会長は全く動じる様子を見せなかった。

「俺はよお東郷、『太陽にほえろ』が大好きでよ、とくに銃弾を受けてなお立ち上がる、松田勇作のジーパン刑事がな」
「関係ないだろ!」
「それに、俺達格闘家にとっちゃ、この程度の負傷は日常茶飯事よ。たかが銃弾の一発や二発で、簡単にくたばってられるかい」

 明らかに無茶苦茶な論理である。

「……よかろう。ならば私とてサバゲーの世界ではゴルゴの異名を持つ男!この程度の銃弾なんぞは死ぬはずがなぁいっ!!!!!!」
「いいだろう。ならば完全に葬り去るまで撃ち続けるのみっ!!」
「それはこっちのセリフだああああっっっ!!!」

 ……かくして。
 いつの間にか集まっていた、サバゲー同好会員およびJACの総メンバーを集め、文字どおりの「完全決着ルール」とあいなったのである。
 とはいえ、互いに武器はペイント弾。そんなもので人間が致死ダメージまで行くようなことは滅多にあるものではない。
 つまりは、子供がよくやるような、水鉄砲と泥んこ遊びを足したものと、実質上は変わるものではないのである。


 時すでに夕刻。
 遊び疲れ、もとい、果て無き戦闘に傷つき倒れた両軍の精鋭らは、皆、赤色塗……血と泥濘の中に倒れ臥していた。
 立っているのは、2名だけ。JACとサバゲー同好会、それぞれを代表する男。
 いまや体力も尽きかけ、戦う余力など残っていないのは、誰の目にも明らかであった。
 が、もはやふたりにとって、勝敗の行方など、どうでもよかった。
 精一杯、力の限り戦い抜いた両者に、言葉はいらなかった。

(……いい闘いだった……)
(……ああ……)

 どちらからともなく、右手をさしのべる。

(……ところで……このへんの掃除、誰がやるんだ?)
(……そりゃ貴様らだろ……サバゲー勝負の提案者はそっちだろうし……)
(……どこの世界に本気であんなの真に受ける奴がいるんだ、貴様らで片づけろ……)

……バキイッ!

 JAC対サバゲー同好会。
 歴史の裏に隠された、この壮絶なる闘いは、両陣営キャプテンの壮絶なる顔面ストレート相討ちで幕を閉じた。
 その後の彼らは……どうなったんかねえ。

(完)


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夢ノ宮奇譚は架空の物語であり、そこに出てくる人名、組織、その他は実在するものとは一切関係ありません。

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