少女は、いつものように遅れて登校する。別に彼女が遅いのではない。一緒に登校するべき人物が、マイペース過ぎるのだ。
「もう、また遅刻だよぉ〜」
「ごめんねぇ〜、スライちゃん」
「そう言うならもっと早くしてよぉ」
「だってぇ〜、ワイドショーが面白かったんだモン」
「いくつだよ君……」
少女達は知らない。自分達がその『ワイドショー』同様のスキャンダルで、ネタにされている事に。
二人が学校到着したとき、既に一時間目は終わっていた。いつものように、お互いのクラスに向かい、荷物を置く。
「………………?」
イノアは、学校の風景に微妙な違和感を感じた。他の生徒達の態度が妙によそよそしい。そして……
(壁にセロテープの跡が……何かはってあったのかな?)
だが、それ以上は考えても解らないため。いつものように二時間目の準備をする。次の授業は移動教室だ、急がなくてはならない。
しかし、珍しい来客が目に入り。イノアは手を止めた。
(みゆりちゃん? 昨日一緒に作ったお弁当でも持ってきたのかな? でもまだ二時間目前だし……)
しかし、みゆりは顔面蒼白だ。とてもじゃないが想い人にお弁当を渡すような雰囲気ではない。
「……健斗くん、少しいいかな…、
その…………この新聞の事で……
……えっと、………聞きたい事が
…あ、………その…………………
………………………………………
…私、…健斗くんにとって………
………………迷惑、だったかな?」
みゆりの言葉は意外なものであった。が、ある程度の事情は呑み込めた。
つまり、あの二人の微妙な関係を誰かが悪質な形でからかったのだ。二人とも、見ていてあまり気分の良い表情ではない。
「授業は三時間目からだな……」
イノアは、椅子に座り直して他のクラスメイトが立ち去るのを待った。