「夢ノ宮」異聞録〜満月の夜には何かが起こる


序章 第一章 第二章 シュー  ?  第三章 第四章  ??  第五章 第六章
第七章 第八章 第九章


序章
登場人物 ??????

 ……満月には人間の精神に働きかける力がある。「狂気」を意味する英単語「ルナティック」や「ムーンストラック」も、これと関係している。
(筆者不明の文章より)

 9月15日。世に言う「十五夜」である。
 ここ土佐家でも、団子を買ってお月見などやっていたりする。

「きれいなお月様……」

 どうやら発案はシューらしい。肝腎の土佐クンはというと、アルコール入っていることもあり、「月よりも団子よりも」状態であったりする。

「月もいいけど……君の方がずっときれいだよ、シュー」
「まあ……(ぽっ)」

 なんて、馬鹿な会話のひとつやふたつもあっただろうか。とにかく、ほとんどお決まりのパターンで、ふたり見つめあい、やがて目が閉じられ……と、続くわけだが、残念ながら、今回はそういう話ではない。

(……遼……)

「……ん?何か言った?」
「いえ……」

(……土佐……遼……)

「……たしかに……私の名前が……」
「……ええ、今度は私にも……」

(……時代はあなたを必要としています……)

「なんじゃそりゃっ!」
「……遼……」

(……来て……いただきます……)

「ちょ、ちょっと待って、いきなり言われても……」
「……遼!」

 土佐遼に抱き着くシュー。
 絶対に離すまい、離れるまいと、その両腕に力を込める。
 だが、次の瞬間……

 ピカッ!

「うわっ……」
「きゃっ……」

 ……シューの両腕は、宙を薙いでいた。


第一章
登場人物 ??????

(……ん?ここは?)

 意識の戻った土佐遼が最初にやったことは、周囲を見回すことであった。
 見渡す限り、あたり一面、何もない。
 とりあえず、自分がいるべき場所ではないことだけは明らかであった。

(ま、まさか……ここが噂のバ○ストン・○ェル?それともエ○ハザード??)

 なんて勝手な想像をする土佐。そのとき。

「バイス○ン・ウェ○でもエルハ○ードでも、ましてやサン○オピュー○ランドでも○張○ッセでもありません……」

 おそらく女性の声。

「うわっ!?なんだいきなり?誰だ?」
「貴方をここへと引き寄せたものです……端的に言いましょう……」
「ちょっと待ってくれ。それよりも先にこっちの質問に答えてほしいのだが……ここはいったいどこなんだ?」

 混乱しているせいか、いつもの敬語口調が完全に消えている土佐。あるいはこっちが本性か?

「この世界は危機に瀕しています……」
「おい、人の話しを……」
「このままだと超獣ルナチクスによってこの世界は破滅してしまいます……」
「いきなりマイナー極まりないネタを……」

 作者が「名前への一部ボカシなくとも大丈夫であろう」と判断したくらい、どマイナーである。一応はウル○ラマンシリーズの中では重要な役割を担っている超獣(怪獣じゃないのがミソ)ではあるのだが。

「……って、ことは、ここは……まさか……」

 空を見上げる。
 巨大な青い天体が、そこには見えた。

「……月……」
「……あなたの時代では、そのように呼ばれているようです……その時代より、数億年前の世界……」
「……」

 細かいことは考えないようにしたらしい。

「……とにかく、私たちの世界を救っていただきたく……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。だから、なんで私がそんなことを……」
「……まさか、やらないと?」

 心なしか、声の質が変わったような?

「おんどりゃぁ、人が下手にでてりゃいい気になりゃあがって、こっちがこんなに頭下げてやったんだから、そっちゃ素直に引き受けるのが筋っちゅうもんだろうが!あなたみたいな人は客じゃなくって、クレーマーっていうんですよ!?わかりますか!?クレーマー!!!」

 ……あまりの怒りに、途中からわけわからん言葉が入っている。とりあえず、逆ギレされたのは確からしい。
 しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。一刻も早く、愛するマイパートナーのもとへと戻らねばならぬのである。

「……お断りします。私は外部の人間ゆえ、内政干渉とおぼしき真似は……」

 この論理も十分に意味不明である。

「……ふう、仕方ありません、たしかに、強制させるわけにもいきません……あなたが自発的に取り組めるまでお待ちしましょう……先生!」

 先生と呼ばれて一人の男が出てきた。

「お願いします……」
「任せてくれ……さ、行くぞ!」
「へ?ちょ、ちょっと、どこへ……」

 「先生」と呼ばれた男に連れて行かれる土佐。
 そして、しばらく後。

「あの強情な男を落とすとはさすが先生……しかし、一体どうやったんです?」
「なあに、啓○セミナーに参加させて、そこで○薬とロ○トミー手術やっただけですよ」
「さすがは先生……」

 彼の名はSAMAYA。某・今はなき「ビジュアル系バンド」ボーカルを自然派アーティストへと転身させたり、某横綱兄弟を仲違いさせたり、某歌手を数万人が合同で行う結婚式へと参加させたりと、さまざまな活躍を行っている謎の男であった。


第二章
登場人物 ??????

「それではこちらです」
「ハイ………」

 女の言葉に、まったく起伏の無い声で答える土佐。
 まぁ、彼が正気なのかどうかは、今の所関係が無いので放っておこう。
 そして、彼が案内されたのは、その日の寝所であった。
 ドアノブに手をかけ、停止する。中から、男女の声が聞こえたのだ。

「冷たいんですね」
「良いから帰れ。ここに居ると、何をするか解らない」

 自分と同じように、起伏のない声。しかし、その内に含まれる物はまるで違う。
 何かを押さえ込んでいるような。内に激しさを込めた声。
 聞き覚えのある声、慌てて扉を開く。
 中には、見覚えのある銀髪の青年と、半裸の女が居た。

「………さん?」

 男の名を呼ぶ。青年はこちらを振り返る。

「土佐さん……貴方もここに?」

 短く整えられた銀髪の青年……アンディが、そこにいた。


そのころシューは
登場人物 E・シュー・土佐

 ……9月15日。
 世に言う「十五夜」である。
 ここ土佐家でも、団子を買ってお月見などやっていたりする。

「きれいなお月様……」

 どうやら発案はシューらしい。肝腎の土佐クンはというと……

「……ZZZ……」

 アルコールが入ったせいか、シューの膝の上で寝息をたてていた。
 本当に心の底から信頼しきっている人の前でのみ見せる、安らかな寝顔。
 見方によっては、なんとも可愛らしい寝顔。
 そんな顔を自分の前で見せてくれることが、シューにはたまらなくうれしかった。
 誰も知らない、自分だけの土佐遼。

「うふふ……」

 なでなで。
 「膝枕」+「頭なでなで」。
 男ならこたえられないシチュエーション。
 はっきり言って、自分で書いてて君のことが憎らしくなってきたよ、土佐君。

 あまりに平和な寝顔。
 いったい、どんな夢を見ているのだろう。
 あの遼のことである、ただの夢であるはずがない。
 夢の中でも、世界中のあちこちで大冒険をしているに違いない。
 ちょっとだけ、うらやましい。

「次は……私も連れてってくださいね……」

 遼の寝顔にむけて、そんな風につぶやいてみるシュー。
 ごく普通の、日常風景のひとコマであった。


もんすた〜???
登場人物 ??????

み??にゃ??
(わきゃわきゃ・・・・)
【・・・某竜の子供(?)が群れをなし大行列となっている・・】

に?(何処に行くの?)
にゃ☆(あっち☆)
ふに〜・・・(ふ〜ん・・・)

(わきゃわきゅわきゃ・・・・)

ふにゃ〜〜(静まれ〜〜〜)
【高台に上っている、一人の某竜の子供(顎鬚がついている)・・リーダーらしい。他の某竜の子供の群れの視線が集まる】
ふに??

・・・にゃ〜!!!【進軍〜〜!!】

・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふに?・・にゃにゃ??(シングン・・って・・・・なに?)

にゃ〜にゃ☆(おでかけのこと〜☆)

にゃ。(わかったにゃ〜)

・・・・【意味がわかっているのかわかっていないのか・・・大行列は進軍をはじめた・・進む先には・・・・】


第三章
登場人物 アンディ&土佐僚

「僕がこっちへ来たのは、旧暦の15夜でした……」

 アンディが、窓に映る青い星を眺めながら呟く。
 正気に戻った土佐は黙って聞いている。その頬には青痣が出来ている。

「フランソワも義母さんも、酔いつぶれて眠ってしまったので、僕も酔い醒まし程度のつもりで散歩に出たんです……」

@       @       @

(月が綺麗だな……)

 アンディは、喫茶店『街』のあるビルの屋上でのんびりと空を見ていた。

(月……その引力と魔力で人の心を奪う物)

 そっと感慨に耽る……月の美しさ、その移ろい、優しさ、恐怖。
 太陽とは違う何かを感じさせる月。古代の人々は、そこに仲間を求め、そこに不死を求めた。
 月の満ち欠けは、狂気と移ろいを示すと同時に、死後の再生と不死をも司る。

(アンディ……いえ、ラインハルト・ゲーレン)

「!?………何故、その名を……?」

 アンディは、驚愕よりも敵意を覚えた。自らの『本名』を知る者など、数えられるほどしか居ないのだ。

(我々は、貴方を必要としています。そして、貴方もここで知るべき事があります)

「一体何者だ! それに、ボクが知るべき事って……」

(来て……下さい……)

 風が流れる……そして、アンディの肉体は何かが揺らいだ事を感じ取る。

「……………!!!!????」

 それが何なのかを理解する前に、アンディと言う存在は夢ノ宮から消滅していた。

@       @       @

「その後は………」
「いや、聞かなくても想像は付きます」

 と、言うより、二人とも想いだしたくなさそうな、苦渋に満ちた表情をしていた。
 何があったのかは、知らない方が良いだろう。
 かく言う私も知らない。知りたくない。
 二人は、それ以上考えるのをやめて床についた。そして……

「敵襲だぁぁぁ〜〜〜!!!」

 爆音と悲鳴で目を醒ました。


第四章
登場人物 ??????

「ま、まさか噂の超獣ルナチクスの襲撃!?」
「……なんですか?それは?」

 このあたりで世代の違いが出た。いや、お国の違いというべきか?
 バリバリの「ウルトラマン」直撃世代の土佐クンに対し、おそらくそのテのことに関しての知識はゼロであろうアンディ君。
 いきなり不安なコンビである。

「と、いうことは、まさかウルトラタッチで……いや、しかし、あれは片方が……」
「……さっきから、何を?」

 そろそろ読者が置いておかれそうになっていることが予想されるので、そろそろ戻ろう。
 とりあえず、様子を見るために、外に出たふたり。
 そこで彼らが見たものは……

「……!!!!!!」

 暴れまくり、建物をつぶしまくりのそれは、なんと巨大なヌイグルミだったのだ!
 しかも、なぜか口が「×」で示されているウサギ!

「……ミッフィー……」

 ミッフィーでわからない方は「うさこちゃん」といえば、あるいはお分かり頂けるかもしれない。

「しかし、なぜミッフィーが……」
「……そうか、わかったぞ!」
「!?」

 MMR隊長キバヤシのごとく、衝撃と確信がごちゃまぜにされたような顔で叫ぶ土佐。

「昔から日本では、9月15日になると満月にお団子をお供えする習慣がある……」
「?」
「そして、日本において、月にはウサギがいるとされてきた……そして、月を眺めると、モチをつくウサギの姿が伺えるという……」
「??」
「そのふたつが結び付ける真実はただひとつ!そう、月面人こそ、我々日本人の先祖だったのだ!!」
「……あの……」
「そして、月に写るウサギは、巨大ミッフィーに襲われている月面人が、同胞たる我々に送り続けていたメッセージなのだっ!!!」
「……ちょっと……」

 もはや「新しい歴史教科書を作る会」の西尾・藤岡の最強タッグに小林よしのりを加えたところで彼に突っ込みを入れるのは不可能であろう。アンディはそう判断した。

「……で、当面の問題は、あれをどうするかですが……」

 アンディの指さした先では、いまだ暴れまくるみっふぃーちゃん。
 その外見と、暴れまくる姿は「ゴーストバスターズ」の「マシュマロマン」ばりにアンバランスであった。

「……はっ!そうだった……すっかり忘れていた……」

 ……忘れんなよ。


しんぐん〜☆
登場人物 ??????

にゃ?(あれ?)
ふに〜〜(おっき〜)

にゃ☆にゃ〜にゃ。(あっち☆いってみよ〜)
にゃ☆(うん☆)

【某竜の子供の群は、向かう方向を変え始めた】

にゃ〜・・にゃ?(あれって・・・うさぎさん?)
ふに〜(おっき〜ね〜)

【混乱深まる満月の夜・・・今再び混乱が加わる】


第五章
登場人物 アンディ&土佐僚

 巨大ミッフィーは、荒れ狂っていた。その理由を知る者は居ない。ぬいぐるみの精神状態なんぞ解ってたまるか!!
 とりあえず、土佐とアンディは、その止め方を考えていた。

「近づきましょう」

 アンディが躊躇無く歩を進める。土佐に一々意見していては、街が完全に破壊されるまで終わらないだろう。そう考えてのことだ。正解である。

「あれは……」

 巨大ミッフィー(面倒臭いので以後巨ミ)の足下まで近づき、信じられない物を目にする。

「危ないですよ! 離れて下さい!!」

 正気に返った土佐が叫ぶ。それに気付いた月の民(らしき者)は、彼等に理解できない言葉らしき物を叫ぶ。

『・∋・○▼・・∀・・7KWiisδικστ・・гзи(訳:臆病者の月の民に、ここまでやってくる奴が居るとは)』
『ζθιικκσKAι・ЁПР(訳:なぁに、作戦通り消しちまえば良い)』

 ええぃ、面倒臭い。この後はカッコだけで書くぞ。文句は言わせん。
 ………と、思ったら会話が終わった。妙な人影は羽織っていたローブらしき物を脱ぎ捨てると、奇妙なうなり声を上げる。

「あれは!?」

 次の瞬間、人影は焦げ茶色の狼と人間の中間の姿に変じていた。

「「人狼!?」」

 二人が同時に叫ぶ。

(確かに、獣人伝説は月と深い繋がりがある。そして僕も……)

 狼達は考える間を与えぬままに飛びかかる。必死で応戦する二人。

(これが……これが僕の『知るべき事』か? ならば……)

「面白い」

 アンディの容赦のない一撃が、人狼の脊髄を体外へ叩き出す。

「ならば、もっと見せて貰おう。この僕がこの地に呼ばれた理由を! 呪われた血の訳を!!」

 戦いを好まぬ心優しき少年の殺戮が、始まった。


第六章
登場人物 ??????

 狼男を素手で次々になぎ倒していくアンディ。その姿は、鬼神のごとく、などというレベルではない。
 彼だけは怒らせないようにしよう。土佐はそう判断した。

「さて、荒事は彼に任せて、私は高みの見物と洒落込……」

 ……めなかった。
 気がついたら、彼もまた、多数の狼男らに包囲されていたのである。
 その数十数匹。ほぼ半数にあたる数である。

「あらら……ヤバいかな?」

 じりじりと包囲の輪を縮めてくる狼男。射程圏内に入ったら、一斉に飛び掛かってくることであろう。
 無意識のうちにポケットを探る土佐。本来なら背中に背負っているアリスバッグが覗ければ一番いいのだが、そんな余裕はない。
 出てきたのは……閃光手榴弾が一個。
 通常の手榴弾とは違い、激しい光と爆音、煙幕によって相手の視覚・聴覚を奪い、行動不能に追い込むための武器である。その効果は数分にも及ぶ。
 これ一個で数匹は無力化できる。が、自分の周囲を取り囲んだ全員に効果を及ぼす手段など……

「……」

 あった。

「……4……3……」

 奴等の機動力は、アンディとの戦いを見て、ある程度は把握している。少なくとも、自分よりも上なのは明らかである。
 こちらが先に動いたところで、相手に捕捉される。
 むこうの動きを見てから躱し切れるとも思えない。

「……2……1……」

 ならば、答えはひとつ。

「ゼロっ!!!」

 狼男が一斉に土佐へと飛び掛かる。
 が、同時に土佐も飛んでいた。
 真上へと。

 相手の機動力および、相手との間合いから、飛び掛かってくるタイミングを計り、同時にジャンプする。
 月の引力は地球の1/6とされている。トランポリンなど目じゃないくらいにジャンプできるだろう。
 あとは、真下に集まった狼男の群れに向けて、手榴弾を落としてやるだけ。

 BOMB!!!

 着地する土佐。
 その周囲には、目や耳を押さえてうずくまる狼男の群れ。

「……ふうっ……一瞬で考えた割には、うまくいったか……ん?あれは?」

 彼方から、何かの群れがこちらに向かってくる。

「……ワギャン?」

 古いぞ。


第七章
登場人物 アンディ&土佐僚

 死屍累々……その表現が一番しっくり来るだろう。
 青年の周囲には、まるで爆撃を受けたような遺体が多数転がっていた。
 青年は、肩で息をしながら周囲を見回していた。

(これは……僕がやったのか?)

 戦いに入る直前までの事は覚えている。しかし、そこからの記憶が今一つハッキリしない。
 その中で青年が記憶しているのは、肉体の奥底から沸き上がってくる高揚感、血を浴びた時の喜び、無限とも感じ取れる力のみであった。
 実際、相手の能力を見る限り、勝てない相手では無かったが、数に押されるであろう事も把握していた。しかし現実には、全く傷を受けることも無く勝ってしまったのだ。虐殺を勝利と呼ぶならば……の話であるが。
 改めて、周囲を見回す。土佐の足下に転がっている者は、まだ息があるようだ。残るは、巨ミのみ。そう、認識しかけた時。

「ワギャン?」

 その言葉を聞き、土佐の視線の先を確認する。そこに居るのは、巨大なプラモデルのような怪獣であった。大きさは人間大。かなり、違和感がある。

「なんですか、あれは?」

 土佐に訪ねた時。アンディは自分のすぐ側に居る巨ミの存在を忘れていた。
 土佐から答えが帰ってくるより先に、ワギャンは行動を起こす。巨ミに向かって口を開く。
 その瞬間、土佐が耳を押さえた。アンディは、人間の可聴域外のその声を聞き取った。月の民の言葉なので理解は出来なかったが。

(『ガー』と言ったようにしか聞こえなかったけど……ワギャナイザーを三個取ったのか?)

 それを聞いた(らしい)巨ミが身を引き、慌てて走り去る。歩幅のせいか、足は短いが恐ろしく速い。

「あ、待て!!」

 無意識のうちに追う二人。だが……

「消えた?」

 二人が、建物の脇を通り過ぎ。新たに巨ミの姿を確認しようとした時、その巨体は月から完全に姿を消していた。


第八章
登場人物??????

「みゃみゃみゃみゃ〜」
「みゃ〜」

 相変わらず、ワギャン(?)らの言葉(?)は理解できない。
 巨ミを追い払い、勝ち誇っているのか、それとも単に騒いでいるだけなのか……

「彼らは一体何なんでしょう、土佐さん……」
「それは私も知りたい所なんだが……」

 ワギャン(?)らのうちの一匹が、こちらに寄ってきた。

「……どうします?土佐さん?」
「敵意はない……とは、思うけど……」
「みゃ〜みゃみゃみゃ、みゃ〜」
「……何て言っているのでしょう?」
「さあ……あ、そうだ。」
「ふみ〜?」

 突然、バックを探る土佐。やがて、何かを取り出した。

「(ぺかぺかーん!)『ほんやくコンニャクおみそあじ』〜!!!」
「い、今のBGMは……」
「みゃ?」
「これを食べると、未知言語が聞き取れるようになるという超優れもの!」
「よくそんなの持ってましたね……土佐さん。」
「こう見えても、私のバッグは、みんなからは『四次元ポケット』と呼ばれてるものですよ。」
「みゃ〜」

 そういう問題かどうかは知らんが、とにかく、あまりに都合のよいタイミングで都合のよいアイテムを持っていた土佐のおかげで、ワギャン(?)らとの意思疎通ができるようになった……

「備え有れば憂いない、って奴ですよ」
「ご都合主義の間違いでは?」
「何か言いましたか?」

 とりあえず、ひとくち。

「まずいっ!この私をアンディと知ってこんなまずいものを出すのかっ!」
「……文化の違いですね、このあたりは。」
「こんなまずい物に金は出せんっ!!!」
「……いつもそうやって無銭飲食やってたんですか……」

 ともあれ、どうにか完食した両者。
 とくに、慣れない「味噌」「こんにゃく(西洋では『悪魔の舌』とか呼ばれるらしい!)」を食べきったアンディ君には敬意を示さねばなるまい。
 かくして、おそらく地球人としてははじめて、このワギャン(?)たちとコミニュケーションをとることになった彼らであるが。

「えっと……あなたがたは……」
『ねえねえ、あのうさぎさん、どこへ行っちゃったの?』
「……疑問文には疑問文で答えろと学校で教えているのかっ!!??」
『ふに?』

 ……不安だ。


第九章
登場人物??????

「まぁまぁアンディさん……」

 土佐がいつものようになだめ役に回る。ただ、普段こう言う対象になるのは彼の相棒である山口か、あるいは酒神のような熱くなりやすいタイプである。
 しかし、今はアンディをなだめる。本来大人しく、紳士的な彼がこのように安易に声を荒げるとは、土佐にとっても意外であった。

「フン……あの化け物がどこへ行ったのか、僕は知りません」
「それで、こっちからの質問ですが、貴方がたは?」

 怯えるワギャン達を尻目に、二人は必要な情報を聞き出そうとする。
 別に、好き好んで連れてこられた訳では無いので必要以上に愛想は振り撒かないつもりなのだろう。

『しらな〜い♪』

 その一言で、会話は終わった。
 溜息を一つついてさっさと宿へ戻る二人。
 だから二人は気付かなかった。いや、見ていても解らなかっただろう。顔の造詣が違いすぎるワギャン達が、ニヤリと微笑んだのを。

 こんな迂闊で良いのだろうか? 非常に不安だ……


登場人物


登場人物


index


夢ノ宮奇譚は架空の物語であり、そこに出てくる人名、組織、その他は実在するものとは一切関係ありません。

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